TOP

猫。
いうなれば、あにひゃーは猫だ。
気まぐれで、何考えてるかわからない。


気まぐれ屋にはどんなエゴも聞こえない


「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
「あら、凛クン」
うちのあんまーは、わんが凛くんを連れてくると至極機嫌が良くなる。そりゃぁ凛くんは見た目も華やかでうじらあさんだもの。わんだって独り占めしたいくらい、しちゅん。

わんの部屋に入ってドアを閉めるとすぐ、凛くんは決まって、もの欲しそうにじっとわんを見つめてくる。
「ぬーやが」
わかっていても聞かずにはいられない。
「ちゅーしたい、ちゅー」
その科白が聞きたい。凛くんが自分からねだる口づけ。もちろんわんは、凛くんの欲求に逆らえるはずもなく(寧ろ、自分の欲求にも逆らえていないのだが、)凛くんの腰に手をまわして口づける。立っていようが寝ていようが、座っていようが、凛くんの自由を奪って、浅く、深く、追って、追われて。
でも自分からねだっておきながら、あんまり深追いすると、凛くんはいやいやする。
「知念、もう、それ以上したらおさまらねーらん」
いやらしい子。
うじらぁやくとぅ、ずーっといちゃいちゃしていたいけど、家族がいる家の中で流石に出来るはずもなく、わんは諦めるしかないんやしが。

んでくっついたままごろごろしてると、凛くんはふらっと立ち上がってわんぬ部屋を出ていく。リビングにいるちびっこ達と遊ぶためにやさぁ。わんは部屋に一人取り残される。しばらくじっとしていると、階下からキャッキャッて楽しそうな声が聞こえてくるんさぁ。妹も弟も、構ってくれる凛くんがお気に入り。凛くんも一緒になってはしゃいでるのが、聞こえてくる。弟が1人増えたみたい。ちょっと嬉しい気もするけど、その間わんはほったらかし。酷いさぁ。
仕方なしにあんまーの家事手伝いしてると、いつの間にかはしゃぎ声が聞こえなくなる。
「にーにぃ」
って末の弟が呼びに来るのは、決まって他の妹弟と凛くんが眠ってしまった時。
「凛クン眠ってしまったさぁ」
「きっと疲れちゃったんだよぉ、一緒におねんねしようねぇ」
弟を寝かしつけてから凛くんを捜しに行くと、畳の部屋で凛くんは大の字になって、しかも気持ちよさそうな顔をして寝ていた。凛にーには気持ちよさそうに寝るから、わったーも眠くなるよとこの前妹も言ってたけど、確かにわからなくもない。凛くんの傍で寝る妹も穏やかな表情をしている。でーじ穏やかで、幸せな午後。

でも凛くん、
凛くんはわんぬ恋人なんでしょう。
もっとわんにかまってくれたって、いいのに。

そっと傍に座って頭を撫でたら、気付いたのか起き上って、わんぬ膝を枕にしようとすりよってきた。しに調子いいんだから。

「フラー」

甘えるならちゃんと甘えて。そしてたまにはわんにも甘えさせてよ。 わんだけの凛くんでいて、わんだけの。
わんの、凛くん。

そっと頭をもう一度なでたら、香水の香りがした。
凛くんは気持ちよさそうに1度だけ、んぅ、と鳴いた。

 

TOP