もぞり。
布団の中に何者かが侵入してくる違和感に、眠っていた山崎の頭は一瞬にして冴えた。
すぐさまに飛び退こうとしたが、やたら屈強な腕に抱えられ、身動きが取れなくなってしまう。
小柄な山崎は後ろから抱き竦められ、首筋に熱く吐息を吹きかけられたところで我慢出来なくなり、懐に忍ばせておいたクナイを相手の喉元につき付けた。
「……誰だ」
微かに声が上擦る。
「どんなつもりで来たのかは知らないが……容赦しない」
相手は後ろの方で嘆息を漏らすと、ついに山崎の上に圧し掛かってきた。
「っ!」
「やっぱこそこそした事は俺には合わねぇな。うん」
「貴方は……」
山崎は思わず声を呑む。目の前にいたのは、あまりにも意外な人物だったからだ。
「えっ……と、永倉さん……?」
「おぅ、起こしちまって悪かったな」
「そうじゃなくてっ……」
永倉のあまりにもあっさりとした態度に、山崎は思わず毒気を抜かれた。例えどんな奴でも仕留めようと思っていたのに、永倉は大っぴらで、強引で。山崎は溜息を吐き、居直った。
「二番組組長にもなる人が、こんな所で何をなさっているのですか?」
「いや、あのな……恥ずかしい話なんだけどよ」
永倉は恥ずかしそうに頭をぽりぽりと掻くと、まるで内緒話をする様に耳元でひそひそと話し始めた。
「月末だろ?」
「……はい」
「まだ俸給前だろー?」
「……はぁ」
「財布の中身が寂しくなってるわけだ」
山崎は未だ話が見えず、首を傾げる。一体金がないから何だというのだろうか、と思えば。
「金がねぇと、島原に行けねぇのよーっ!」
「はぁ?」
山崎はあんぐりと口を開け、それから赤面した。
「あ、あんたまさか、遊女の代わりをっ……!」
「いや、細身で良い奴がいたら頼もうかなと思ってよ……そんでお前を夜這いしてみたわけだっ!」
永倉が片目を閉じてそう明言したのに、山崎はまた開いた口が塞がらなかった。
「……情けない、二番組組長にもなろうお人が、金欠で衆道に走るだなんて!」
「まぁそう言うなって。俺だって色々考え、悩んだ末出した結論だからなっ」
「そう威張らないでください。しかもどうして俺なんかを……」
「まぁ、、あれだよ。お前も監察方として色々経験してきた身だろうと予測してな」
「はぁ……まぁ、そうですが」
「いや、人に言いにくい事もしてきたと思う。うん。お疲れ!」
「……はい」
ちなみに山崎は今感激していた。今まで当たり前だと思ってやってきた事をこうして理解し、労う人はいなかったからだ。
「だからな、男も知ってると思って」
「……え?」
思わぬ事を言われ、山崎は目をぱちくりさせる。
「頼むっ!男の味を知るお前にしか出来ない頼みなんだ!抱かせてくれっ!」
「そ、そんなっ……!」
山崎は首を振った。山崎は確かに人に言いにくい事もしてきたが、殺生等が限界で、ましてや男の味なんて知りもしないのだ。残念ながら仕事でそういう色っぽい事を頼まれた事は一度もなかった。
「ご、誤解ですっ、永倉、さっ……」
気が付いた時には布団に押し倒され、唇を奪われていた。永倉は山崎の細い手首をぎゅっと握り締め、ぬるりと舌を交わらせる。
「あ……ふ、」
「山崎っ……」
瞳が合うと、あまりにも切実な色に、山崎は息を詰めた。
もしかしたら、これは本当に覚悟を決めなければならないのかもしれない。
山崎はそう悟り、ぎゅッと目を閉じた。
「……怖い、か?」
「……怖いに、決まってます」
そう言葉を交わしている間にも山崎の着物は脱がされてゆく。山崎がゆっくりと目を開けると、同じように裸になった永倉が覆い被さる様にして目の前にいた。
「……その、優しくはするから」
「……はい」
山崎は覚悟を決めて、しっかりと頷いた。それを見て永倉は安堵した様な笑みを浮かべ、額に口付けてくれる。優しい口付けだった。
「山崎っ……!」
とにかく、全てが熱かった。永倉が触れる所は皆火照り、恥ずかしくなるくらい蕩けてしまう。
山崎は声を上げるのをひたすら我慢し、受け入れるしかなかった。
「辛いか?」
「い、え……」
「中、いい感じになってきたぞ」
永倉は三本目になる指をぐちゃりと挿入する。
「ひっ、あっ……!」
永倉は山崎の下半身に顔を埋め、堪能した。小さな山崎の雄を擦り、扱く。蜜口から滴る露さえも、永倉は躊躇なく吸った。
「なっ……がくらさっ……!!」
「ん?」
「出、るっ……出てしまいますっ……!」
「おぅ、出しちまえ。楽になれよ」
山崎は身体を震わせ、声なく吐精した。無論、永倉の口内に。
「っ……すみませ、」
「いいって。ほら、山崎の中もいい感じになってきたところだし」
山崎の蕾に舌を這わせ、永倉は笑む。山崎は赤面した。
「なぁ、」
「はい?」
「そろそろ、いいか?」
永倉は窺う様に覗き込む。山崎は暫く葛藤を繰り返し、そして観念して首を縦に振った。
「よっしゃ」
永倉は山崎の脚を持ち上げ、大きく広げる。白い内股を愛しそうに撫で回されるのを見て、山崎は思わず一晩愛される遊女の様な気分に陥った。
「永倉さん……」
優しい指で髪を梳かれる。
優しい腕で抱き締められる。
そして山崎は、恥じらう暇なく、「生娘」を捨てた。
「あっ……あぁっ」
熱くて大きい何かが山崎を支配する。苦しくて、辛くて、泣きそうになったけれど、永倉は優しく宥めてくれた。
「山、崎……もう少し、だけ……」
「あっ、あっ!ぁ……」
山崎は静かに喘ぐ。永倉の逞しい腕の中、胸の鼓動を聞きながら。
「すっげ……ぐちょぐちょ。やらしー」
「言、わないで、下さっ……っん、」
きゅ、と山崎は唇を噛む。
「声、上げねぇの?」
「誰かに……聞かれたら、」
嫌だ、と山崎はか細く啼いた。永倉は山崎の薄っぺらな胸板を撫で、桃色に色づいた胸の突起を擽る。
「お前の声、かわいいのにな」
「……男ですよ」
「いンだよ。男も女も一緒だっ!」
一緒じゃない、と内心思いながら、山崎は永倉を見上げた。
あまりにも違いすぎる体格に、少しだけ恥ずかしくなる。
「ん?どうした?」
「……別にっ」
「あ、今かわいい顔したなー」
永倉は言いながら山崎の唇を吸った。その甘さはまるで恋人に対してするみたいなもので、山崎はまた錯覚しそうになる。
(……駄目だ)
こんな思い、抱いたらいけないのに。
「永倉さんって、」
「ん?」
「結構、酷い方なんですね」
「えっ?」
無自覚に人の心を弄んでいる。永倉は山崎をぎゅッと抱き締め、少し動いた。
「あっ」
「ん……」
「ちょ、あんた興奮してっ……」
どこにそう思ったのか、山崎には分からない。が、永倉は中で膨らんでいた。
「あっ……ああぁっ」
抽挿が始まる。永倉のは大きいから、全て持っていかれそうで少し怖い。でも、初心者の山崎でも分かるくらい、永倉は優しくしてくれていた。
「あん、やっ……!」
「ちょ、っと……いく」
「い、く?え、あ、あぁっ!」
ぐんっと大きく突き、奥まで進む。そして永倉は膨らみ、欲望を破裂させた。
「や……!」
熱いものが注がれる。初めての感覚に、震えた。
永倉は山崎の髪を梳き、額に唇を触れる。
「……あ……」
「よく頑張ったな」
「そ、んな……」
山崎は頬を赤らめ、拗ねる様にそっぽを向いた。永倉はくすりと笑い、そっと山崎に覆い被さる。
「……お疲れ」
優しい言葉。
「……あんたって、」
恨めしそうに睨め、山崎は顔を寄せる。そっと、密やかに囁いた。
「身勝手な人……です」
唇が、触れる。
甘酸っぱい恋心は掻き消されるどころが、山崎の心に重く、深く沈澱した。







まさかの新八っつぁん×山崎君!!
無駄に薄桜鬼はまりすぎて困る……;;;;
少しでも薄桜鬼ファン、山崎君(受け)ファンが増えてくれたら幸いです^^(2011 02 03 時雨)