「永倉君って、優しいよね」
することをした後、彼女に言われたことがある。
「でも、何か優しすぎ。エッチの時も全然がっつかないし、何か物足りないっていうか、刺激ないっていうかさ」
何だそれ、と俺は思った。刺激ないって何?つか、刺激求める為にエッチしてんのこいつ。
って思って、俺は一気に冷めた。
「見た目からしてガツガツくるタイプだと思ったのにー。永倉君、もっと激しくしてくれていいよ?」
「じゃ、もう、いい」
「え?」
「別れよ」
俺は、臆病だから。




誰と付き合っても、俺が満たされることはない。それは、がっつくセックスなんかでは満たされない。もっと、心の奥深くまで染み入るような何かが欲しかった。でも、女の子は普通に好きで、告られれば誰とだって付き合ったし、セックスもした。
でも、何かが足りなくて。
「つまんね〜なぁ」
充実してた毎日。今じゃもうつまらない何か。大学も最近サボり気味だし、何かもう、全部最悪。
「……誰か、会いてぇな……」
高校の時の親友とは、全員離れてしまった。俺以外はみんな私大だし、こっからちょっと遠い所に住んでるし、相手の都合もあるし、中々会いにくい。
「何でかな……」
がっつく方が、いいのかな?いい訳ない。相手が傷つくだけだし。痛いことは俺だって好きじゃない。怖いんだ、誰かを傷つけるのは、もう。
(……どっか行こうかな)
一人で寂しくやけ酒でも。




「山崎、久しぶりだな〜」
偶然出会った高校時代の同級生を無理矢理連れて、居酒屋に飛び込んだ。個室でまったりと飲んでいたら、向かいに座る山崎は全然楽しそうじゃなくて、
寧ろ、泣いてた。
「何か、あったか?」
「うっ……ううぅ」
小さく声を上げて泣く山崎を慰めながら、俺はどこかで全然違うことを考えていた。
流れでエッチなことしたら、こいつはどうなるんだろうとか、
嫌がる山崎に無理矢理突っ込んだら、どんな反応するんだろうとか。
最低なことばっかり。
「取り敢えず、落ち着こうぜ?あ、場所移すか?」
「……ち」
「へ?」
「永倉ん家、行きたい」
おいおいおい、マジかよ。そっから何かあったらこいつどうすんの?責任持てねぇ……ってか、こいつ男じゃん。何、え、ゲイなの?
「……いいけど?」
山崎は微かに笑った。俺は仕方なくタクシーで家まで帰り、たった一杯の酒で酔っ払った山崎を寝かしつけた。
「あ〜あ……」
何で俺はこいつに声をかけたんだろう。今まで見かけた時は一回も声かけなかったくせに。どうしてだろう?……一人だったから?
(お互い、独り身だよな)
寂しいような、辛いような。俺は傷つけないように、そっと山崎の頭を撫でた。子供みたいな寝顔に、俺はちょっとだけ安心した。




相手を傷つけることは容易だが、
優しくすることだって、簡単だ。
俺は、傷つけるより、優しくしたいんだ。傷つけたくないから。










弱虫な新八愛しい!続編はもうちょっと経ってから……;;←
(2011 05 05 時雨)