その絶対的な「力」に俺は魅了されていたのかもしれない。


俺の持ち得ない物を峨王は持っている。憧れはあった。
でも、こういうことじゃ、ない。
「なんだ」
「いいいっやああああ何してるっちゅう話だよ……!」
「お前を組み敷いている」
「それくらい分かるよ!」
俺は、誰もいない脱衣所で、腰にタオルを一枚巻いただけの峨王に組み敷かれていた。
「何するつもりだっ」
「何って、セック」
「わーわー!」
何をぬけぬけと、チームメイトで且つ同性の俺に「セッ…(自主規制)…をする」と言うのか。まったく意味がわからない。
「なんで」
「お前がいやらしい目で俺を見たからだ」
「別に見てないっ!見てないからっ!」
全力で否定しても、峨王は不敵な笑みを浮かべたまま、俺のYシャツをはぎ取った。ぶちぶちという音とともに、ボタンが至るところに飛び散る。
「や、やめろ、」
「無理だな」
「お前ゲイだったワケ?」
「違う」
「じゃぁ別にする必要ないんじゃぁ……!」
「円子、お前は別だ」
「な に が」
「そんな目で不躾に見るなど、」
ぐっと俺の顎が峨王の手に掴まれる。痛い痛い。
「誘っている様なものだろう」
「だから誘ってな、んー!」
やめろと叫ぶ暇もなく、峨王の顔が一気に接近して、俺の唇に峨王の唇が押し当てられた。正確にはしゃぶりつかれた。唇を吸われ、べろりと舐められ、無理やり舌で口をこじ開けられ、かき乱され、舌を強く吸われた。舌引っこ抜かれるかと思うくらい、強く。ひどく長い時間に感じられた、それくらい執拗で、気が遠くなる行為だった。俺は、峨王に、ディープなキスをされた。……全然、嬉しくない!
「っは、ひ、どいっちゅー、話だよ、」
「の割には、お前の下半身は反応しているようだが」
指摘されて慌てて隠そうとするも、峨王の身体に足をこじ開けられた。恥ずかしながら反応してしまった「それ」がそこで主張していた。肉食獣の貪る様な口付けに感じてしまったことを。
頭を抱えたくなった。が、峨王に抑えられているせいでそれすら叶わない。
仕方なく峨王を睨みつけると、あまり効果は無いらしく――寧ろ逆効果だったようで――にやりと舌舐めずりをされた。最悪だ。ヤる気スイッチはそんなところにあったのか。
「ほら、どうだ」
峨王の下半身が、ぐりと俺の下半身に押しつけられる。
「う、わ、何、それ」
「俺のペ」
「わーわー!わかってるって!」
「だったら聞くな。いちいち五月蝿い」
「なん、っでだよ」
「お前のせいだ」
性的趣向に寛容なのは悪くないが、今のこの状況は俺にとってまずい。峨王は布越しに雄を俺のものにぐいぐい押しつけてくる。
「んああっや、めっ」
何が悲しくて情けない声を出さなきゃいけないのか。何が悲しくて男に超元気なアレを押し付けられなきゃいけないのか。切なすぎて涙も出ない。
「うひゃ!」
ベルトを引きちぎるように外され、ズボンと下着を一気に下ろされた。もろに俺の下半身が露わになった。外気に触れてびくりと揺れる。
「ほう」
「ちょ、……っと……!」
峨王の大きな手が、俺のものをやんわり包み込んだ。嗚呼やばい、つぶされたらどうしよう、そっちの方が怖い。と内心ハラハラしたけど、次の瞬間には適度な力具合で竿を擦られて、イってしまいたい気持ちとプライドとに戦うハメになった。
「うーっ、んぅ、は、」
「口では嫌がってる割に、こっちはもう涎まみれだぞ」
「う、るさ、」
反論する言葉の隙間から洩れる自分の吐息が熱いものに変わっていく。悔しいけど、気持ちいいのだ。男の、峨王のごつごつした手で擦られるのがこんなにも気持ちいなんて思いもしなかった。
「あ、あ、あ、」
思考停止した次の瞬間、身体が揺れて、俺は情けなく峨王の手に射精した。もう嫌だ疲れた。
「はぁ、気が済んだなら、早く帰ろうっちゅー話だよ、もう、絶対誰にも言うなよ」
「気が済んだ?円子、まだこれからだ」
「はぁ?」
「俺は未だイってない」
「ッ!じゃぁ何?俺がお前のをかいてやってイかせてやらえばいいわけ?!」
「違うな」
「はぁぁ?」
「犯させろ」
起き上ろうとしていた俺の状態はまた床に押し付けられた。足がぐいと持ち上げられ、峨王の両肩にのせられる。
「う、あ」
俺自身の向こうに峨王の満面の笑み。なんかえげつない構図。精子と先走りがぽたぽたと俺の胸の上に落ちた。
「男同士はどこを使うか知ってるか」
「興味ない!」
「ここだ」
ざらりとした指が、俺の尻を割って奥のすぼんだ点を的確に撫でた。
「ひぎゃ」
「情けない声だな」
「笑うな、あ、ちょ、」
「ほぐすぞ」
「い、ッ」
嫌だと言い終わらないまま、峨王の指が無理やり突き立てられた。息を呑んだまま暫く呼吸をすることを忘れる。
「ん、んん、」
「息を吐け、力を抜かないと痛いぞ」
「じゃぁ痛いことすンなっちゅー話!ぃぃいい!」
容赦なくぐいぐいとそこを押し拡げて、峨王の指は入ってきた。
「あっ、峨王、あ、いや、いやだ、が、お」
「中もいい色をしてるぞ」
「や、ばかっ、拡げンなぁ」
いつの間にかいれる指を増やしたのだろう、更にぐいと拡げられた感じがした。
「言葉に弱いか?締まったぞ」
嫌なのに、目をあけると卑猥に笑う峨王と、いやらしく反り返った自身が見える。なんていう辱め。帰りたい、帰りたい。ちょっとした羨望の目で見ていただけが、こうなるなんて!反省します、もう二度と軽率に羨望を抱きません。
「もういいだろう」
ぬちりという音をたてて指が引き抜かれた。弄られていた部分がひりひりする。
よかったもういいよそうだよ帰ろうなんて思った俺はやっぱり甘かった。
ぬ、と熱い尖端がさっきまで指で掻き回されたところにあてがわれた。
「う、あ、」
俺のと比べ物にならないそれが、俺のと比べ物にならない体重の負荷を受けて、めりりと侵入してくる。感じが。ああ、もういや!嫁にも婿にもいけません。
「がおおおおおおおおうううううういやああああああああ」
「黙れ」
はいすいませんでした、と脳裏に単語が閃いて、一瞬で消えた。
「んうぅぅ」
まじで痛い。本格的に痛い。声が声にならないくらい、痛かった。お前が俺に謝れ。身体が裂ける。そこから真っ二つに裂けてしまうような痛み。今まで感じたことのない激痛が、そこから脳天に突き刺さった。
「ちょ、が、あ」
ゆっくりとしたピストン運動が徐々に容赦なく速くなっていく。ただでさえ峨王は力もあって体重もあるんだから、更にそこにスピードがつけば、加速度が着いて俺の受けるダメージは、
「ひッ、あぅッ、あひッ!」
言わずもがなだった。突かれていたと思ったら突然峨王に身体を反転させられた。腕にも足腰にも力が入らない。峨王に腰を支えられているせいで、尻を突き出している様な格好になってしまっているのがなんとも情けない。
「円子、そんなに締めるな、イく」
締めてないよ、さえ言う間もなく、再び奥を突かれて、俺はまた代わりに悲鳴に似た嗚咽を出す羽目になった。肉と肉がぶつかりあう音とは、こういうことをいうのだと思う。激しく突かれて、奥に、がおうが、おくに、どんどんはいってきて、おくに、ぐちゃぐちゃと、いやなおとがして、だんだんしかいがかすんできて、それで、おれは、おくがあつく、
「ッ……――」

肩で息をしていると背後の野獣、もとい猛獣がずるりとそれを引き抜いた。それでようやく峨王が俺の中で果てたのだと知る。
「あー……最低っ、ちゅー話だ、よね、まじで」
腰を解放されて、素っ裸で床に突っ伏す姿はどれほど情けないだろうか。絶対誰にも見られたくない。
「一とっ風呂浴びるか」
「そ、の前に、こ、れ、掃除して」
「なんだ、お前が散らかしたんだろう」
「ッ鬼!」
「後ろからもだらしなくこぼしてるぞ」
「だ・れ・の・せ・い!っちゅー話っひゃ!撫でるな」
ぐいと後ろから抱き起こされて目の前に突きだされた峨王の指にはぬっとりとした白濁の液体が。
「舐めろ」
「うぐ」
「情けない顔をするな」
「お前はどこまでドSなワケ……」
「フン。……掻きだすのと、あと薬くらいは塗ってやる」
「くす、り?」
「裂けただろう。それともいたくなかったのか」
「痛かったに決まってるだろ!」
「切れてる」
そういってもう一度見せられた先程の峨王の指には、白濁とともに、赤い液体。そう、赤い。赤?
「え、ちょ、血?」
「血だ」
「血ぃぃいいいいいいいいいいいいい」
血だとわかった瞬間に、改めて痛みが戻ってきて涙目になる俺に、峨王はそれくらいで喚くなと冷ややかに言った。
身体のダメージもそれなりにあったが、どちらかというと男に犯されたことにそんなにショックを受けていないことに、精神的大ダメージだった。





ギャグテイストでお送りしました。いつから書いてたのコレ……。時間がなかなかさけないこともありましたが、それにしてもこれしかあげられてないってどういうこと……すみません、残念ですみません。またちょいちょい更新できたらと思ってます!半端なエロさと長ったらしい文章をここまで読んでくださってありがとうございました!
タイトルには元ネタがありますがなんとなく取ってみただけです深い意味はありません^q^
「理性は羅針で、欲望は嵐だ。」――ポープ『人間論』
(2010 12 20 jo)