「よォ、」
「ん」
チャイムを鳴らすとすぐに玄関が開いた。出迎えてくれた蛭魔は、黒のタートルネックセーターに黒のパンツというシンプルな黒づくめ姿だった。余計に白い肌が強調され浮いて見える。
「正月くらいめでたい日なんだから、色モノ着たらどうだ」
蛭魔は俺の助言にとりあわずにケケケと笑って顎で入れと促す。 リビングの小さなこたつの上にはカップ麺の容器が1つ置いてあった。箸がつっこまれたままのそれはまだ湯気が立ち上っている。
「もしかして今朝のメシか」
「あぁ」
「体に悪いものばっか食いやがって……ん、うちからのお裾分けだ」
今朝自分が食べてきたものと同じお節料理が入ったタッパーを渡すと、そりゃどーもと早速中をあけた。
「普段からしっかり食え、じゃねぇと倒れるぞ。どうせまたすぐにアイツらの面倒見に行くんだろ」
「たりめーだ」
早速蛭魔は小皿と箸を出してきてこたつにもそもそと入った。むかい側に入った俺は選り好みして取ろうとするその箸を奪い、万遍無くよそう。些か不愉快そうに目で訴える、その様子がまた可愛い。
「好き嫌いはよくないからな」
「別に誰も困らねぇだろ?」
「栄養失調でぶっ倒れられたらたまんねぇぞ」
「ばーか」
誰が倒れるかと舌を出した蛭魔は、結局皿に盛られた分を綺麗に平らげた。ぺろりと唇を舐める様が艶っぽくてついじっと見つめると、それに気付いたのか唇が不愉快そうにひんまがった。
「ンだよ」
「まぁ、新年早々するのも悪かねぇよな?」
「はぁ?」
「今年もよろしく、てことだ」
「テメェ、朝っぱらから盛るなよ」
そんなことを言いながら口の辺りが厭らしくつり上がってるのは諾、という証だった。
「とりあえず片付けるか」
いつもならすぐにでもことに取り掛かるのに、こたつの上のゴミやら食器やらの片付け取り掛かった俺を、訝しげな、誘うような目が追い掛けてくる。 何も言わずに笑ってやると意味がわからないとでも言いたげに蛭魔はこたつの上に顎を預けた。



   #



「ん、あ、てめ、」
「こういうのもありだろ?」
「ばっ、か、汚し、たら、どうすんだ」
先程と同じように俺たちはこたつを挟んで向かい合っていた。違うのはより深くこたつに入っていることと、蛭魔の顔が快楽のために歪んでいることだ。
「寸止め」
「殺、す気、か」
「お前ん家のこたつって小さいからいけると思ったんだが、少し大きい、かな」
ぐっと腰をあげると蛭魔が仰け反って、白い喉が顕になった。
「……くそあちぃ」
「電源切るか」
にやにや笑って蛭魔を見ると馬鹿にするなよと挑戦的な笑みで返された。 こたつに入ったまま手探りで挿入したそこは慣らしていないせいで初めこそ抵抗を見せたが、徐々に快楽欲しさに熱く絡み付いてくる。座位の時と似ているようで違う挿入角度がいつもとは別の内壁をすりあげて、あの蛭魔が、滅多に喘がない蛭魔が、甘い嬌声をあげた。
「いいのか」
話すのも煩わしいとでも言いたげに蛭魔は自ら腰を揺する。抜けそうでいて抜けない、そのぎりぎりの感じを堪能しているのだろう、蛭魔の吐息が次第に喘ぎ混じりの、熱く、濃厚なものになっていく。
「淫乱だ、な」
「っ……るせぇっあ、っは、ぁ」
「いくか」
「ん、ぅ、……はぁ、ぁ」
完全にこっちのことなんか無視で一人で愉しむあたりこいつらしいと言えばこいつらしいというか。 下肢は既にじっとりと湿っている。先走りの液なのか汗なのか、蛭魔のなのか俺のなのかもわからない。
「あ、あ、……っい、い、く」
「おいおい、勝手に盛り上がってんじゃねぇぞ、っ」
絶頂寸前までのぼりつめている蛭魔の体ががくがくと俺の上で動き、それに合わせてこたつまでゆさゆさと暴れた。 が、俺はずるりと蛭魔の内から己を引き出す。 紅潮した顔が、みるみる苛立ちに歪む。
「てめ、」
「汚れるのは嫌なんだろ?」

よっこらせと立ち上がって蛭魔の後ろに回った。
「ベッドいくぞ」
ひょいとこたつからその細い体をひきあげて運ぶ。下半身丸出しの男二人の姿なんて間抜けにも程があるのだが、だらしなく俺に体を預ける蛭魔を見てると笑うよりも先にむらむらときて、これが若気の至りというやつか(……俺が言うとなんだか胡散臭いが)、めちゃくちゃに喘がせてやりたくなった。 ベッドに四つんばいにさせて後ろから一気に貫くと、眼下にある白い背中がしなやかにしなる。
「っあ、っあ、っ……――――!」
きゅうと中が締まったかと思うと蛭魔は体を痙攣させて白濁をベッドに吐き出す。 俺はさらに腰を奥へとすすめた。
「あ、て、めぇっ……っ」
「誰が休ませるなんて言った?」
首を僅かにこちらに向けて目の端で睨んできたがそんなの何もなりやしない。寧ろ俺は煽られるんだ、自分で墓穴掘ったな 、馬鹿だろ。
すぐに蛭魔の腕も足も自分を支えられずに崩れ落ちた。俺は蛭魔の腰を手で支えて容赦なく打ち付ける。
「や、あ……っ、ん、うっ……」
「ここが好き、なんだろ」
「ひっ」
シーツを握りしめる手がふるふると震え、悶えるように蛭魔はこくんと頷く。
「しって、ん、ならっ……はっ、……とっとと、」
喘いで擦れた声が厭らしいのが悪い、最後まで言わさずに蛭魔の"イイトコ"を擦りあげる。
「っあ―――……!」
蛭魔が達くのと同時に俺も奥めがけて、欲望を吐き出した。



   #



窓を開けるとひんやりとした風が部屋のなかへ流れ込んだ。熱をもった身体には心地よかった。 ベッド上で依然ぐったりとした蛭魔が寒いと呟く。
「こもってるから、空気いれかえたほうがいいだろ。布団にくるまっとけ」
「……」
「すぐしめるから」
手招きする蛭魔に誘われてベッドに入り込むと、熱を求めて細い体が俺の体に擦り寄ってくる。 猫みたいなその仕草に思わず頭を撫でると噛み付きそうな目付きで睨みあげられた。
「おーこわ」

うちのお姫さんはまったく、素直じゃなくて困ったもんだと、やさしくその頬にキスを落とした。





姫初めで炬燵隠れです(爆)なんという無茶ををを(^q^)1月1日にアップしようと思ったのですが間に合いませんでしたゲフーン。(2010 01 03 jo)
背景つけてみた(2010 08 24 jo)