「主将とはどうなの?」 あまりにも唐突な質問に、俺は読んでいた雑誌から顔を上げ、思わず聞き返した。 「今、何て?」 「だから、君たち最近どうなのかなーって思って」 「どうって……別に、」 瞬時に俺の顔が熱くなる。どうも俺は顔に出やすいタイプだから、それを見たキッドさんは嬉しそうにほくそ笑む。 「いい感じなんだ」 「どうして、今そんなことっ」 「だって、だーれもいないから、かなぁ?」 部室で2人きり。ほぼ向かい合って座っていた。相手がキッドさんだからってかなり油断していたけれど、まさかそんな話を持ちかけられるなんて。 「いっ……いちいち人の事聞きますかっ」 「知りたいよ〜?一応見守ってきた立場だからねぇ……キス位はしたよね?」 「キっ……」 また俺は顔を赤らめる。ぱらぱらとめくる雑誌の内容なんか、頭に入ってくる訳がない。けれど、俺は気を紛らわす為にその無駄な行為を続ける他なかった。 「そっか。キスはしたんだねぇ……」 「文句ありますかっ?」 「ないけどねぇ……主将も意外とやるねぇ」 「キ、キッドさんはどうなんです?その……鉄馬さんと」 「鉄馬と?まぁ、いつも通り……」 キッドさんは頭をかきながらそう言う。この人たちの「いつも通り」の基準がさっぱりわからない。 「やっぱ長年付き合ってるしね。やることはやってるよ」 「や……やる、こと……」 「そ。ヤること」 キッドさんはニヤリと笑う。 「主将とは、もうした?」 「し、て、ない……ですけど」 「そう」 そこでつまらなそうにしないで下さい、キッドさん。 「どこまでしたのかなぁ?」 「え……と、こすったり、とか」 「へぇ。主将のおっきかったでしょ」 「そりゃ、牛島さんは体もおっきいですし……」 「どの位なんだろう。鉄馬位かねぇ?」 予想しないでください。というか、鉄馬さんおっきいんだ……; 「陸も苦労するよねぇ」 「そうですか?」 「もし、主将に求められたら、陸はどうするの?」 「牛島さんに?」 考えただけで、体がぱっと熱を帯びた。もし、俺は牛島さんに求められたらどうするんだろう?そういうこと、するのか? 分からない。まだ、求められていないから。 「……分かりません」 「……そっか」 「キッドさんは?」 「するよ〜?」 当たり前の様に答えるキッドさんに、俺は思わず吹いてしまった。偉大だなぁ、この人等は。 「お、何2人でこそこそ喋ってんだよォ」 勢いよくドアを開けて、牛島さんが入ってくる。続いて、鉄馬さんも。 「あ、お帰りなさい」 「お帰り、鉄馬」 鉄馬さんはコックリと頷いて、当然キッドさんの横に座る。 そして、2人だけの世界に入っていってしまった。 (敵わないな、本当) 「どうした?陸」 「いえっ」 分かってたけど、改めて感じさせられた。キッドさんはとても鉄馬さんが好きだということ。そして、鉄馬さんもその気持ちに応えている。 それは、とても素敵なことだ。 (いつか、俺達もこの2人みたいになれたらいいな) 「帰るぞー」 「はい」 牛島さんについていって、部室を出る。頼もしい背中。 「ね、牛島さん」 「ん?」 「手、繋いで帰りましょうか」 大人の道に、一歩だけ前進した。 随分遅くなりましたが(ごめんなさい)、アンケートでリクエストのあった受けの子の惚気っぽい話です、気に入っていただけたら幸いです^^(2011 02 10 時雨) |