「てつまぁーおはよーう」

俺の声で目覚めた鉄馬は上体を起こして目をぱちくりさせた。寝過ごしたのかと思ったのか慌てて枕元の時計を見ている……――残念でした、今日は俺のほうが起きるの早かったんだよね。
不思議そうに見上げる鉄馬に答えるように俺は今日14日なんだよねぇ、と言った。

「だからはい、チョコ」

オレンジ色の包装紙に茶色のリボンがかけられた、手のひらサイズの小箱。 ついこの前、デパートの催し会場でバレンタインイベントをやっていたのでふらりと立ち寄った。
その場にそぐわない男子学生が女性陣営に単身乗り込んでいくのはなかなか勇気のいることで、俺は女性たちの興味と怪訝の入り交じった視線にさらされた。
鉄馬にあげるのに丁度いいものを見つけたいなぁと思って、ショーウィンドウの元へ踏み出した、その考えが甘かった。
チョコレートが溶けないのが不思議なくらいの熱い人の流れにおされ、思うように見て回れず、気が付いたらいつのまにか外側へ吐き出された。 二度目はちゃんと気合いを入れて進んだ、でもアメフトとは違う女性の迫力に気圧された。
仕方なく一番手前にあった店で買ったのがこのチョコレートで。

「なんだか、馬鹿馬鹿しいけどそわそわしちゃってねぇ、柄にもなく早く起きちゃった」

鉄馬は目をぱちぱちさせて

「……あ、りが、とう」

とはにかんだように言った。ああ照れてる。かわいい。これでこそ俺の苦労が報われるってものだよ。

「血糖値、あげとく?」

ベッドの横にしゃがみこんでわざと上目遣い気味に見上げてやると少し朱のさした鉄馬の頬が更に赤く染まった。
あーあぁこんな学生らしからぬオッサンもどきにどきどきしちゃって、鉄馬も相当末期だなぁ。わざと上目遣いする俺も俺で、どうかと思うけど。
小箱の紐を解き蓋を開けると中にはトリュフチョコが4つ、おとなしく自分の場所にちょこん、と座っていた。そのうちの1つを摘み上げて鉄馬の口の前に持っていく。

「はい、あーん」

かぱっと開けられた鉄馬の舌の上に、チョコを転がす。
閉じようとしたその唇をわって指をねじこむと、鉄馬は困ったように俺を見た。

「指、噛まないでねぇ」

口内ですぐにトリュフがじんわり溶ける。と同時にふわりと濃厚なミルクが鼻先をかすめた。

チョコと唾液を絡めながら鉄馬の口内で指を蠢かせる。指のせいで完全に閉じられない口から たらりと茶色い唾液が流れ落ちた、けど、そんなことは気にしない。困ったような視線をまるで無視して歯列をなぞると、指を丁寧に舐めあげられた。
ごく、と鉄馬の喉が動く。

「上手に舐めるねぇ」

おずおずと俺の腰にまわされた腕に引き寄せられる。俺は指を引きぬいて鉄馬の目の前で唾液に濡れるそれを音を立てて舐めた。

「チョコ味、」

恥ずかしそうに視線をはずす鉄馬の唇にそっと口付けて、指でしたように舌で鉄馬の唇を、歯列をわって口内を犯すと、舌先にふわっと甘味が広がった。
たまには俺が攻めなんてのもアリ?と思っていたらいつスイッチが入ったのか、鉄馬の舌が息をする間も惜しいほど激しく絡みつく。 酸素欲しさに逃れようとするもなかなか解放してくれないそれに、俺は鉄馬の雄を見た気がした。
唇を放したのはチョコ色の唾液が零れて鉄馬のパジャマを汚した後で思わず二人で苦笑い。

「キスもチョコ味だねぇ」
「し、しえん、」
「ねぇ、」

ぺろっと唇を舐めて笑って見せると、適わない、とでも言いたげに鉄馬はうつむいた。そんな鉄馬を覗き込み、俺はわざと蠱惑的に微笑む。

「しようか」





happy Valentine's Day





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すべりこみセーフ!(^q^) gdgdすみません あとは皆様の妄想にお任せします

(2010 02 14 jo)