いつだってしえんは、どこかで俺を信じてくれてなかった。
真っ白いシーツの上に落とした、涙の染み。不確かではっきりとは見えないのに、じわじわと脅かす、薄暗い点が、いつも紫苑を陥れようとする。俺の知らないところで蝕まれていく紫苑を、俺はどうやったら救えるのかがわからない。

好きな人を悲しませたくない。
たったそれだけのことなのに、どうしてやればいいかわからなくて、ただ傍にいて望みをかなえてやることしかできなかった。

  好きだから、俺はしえんを傷つけたくはない

そう告げた時の、何か張り詰めたものがふっと一瞬にしてなくなったかのような、紫苑の表情。ぽっかりと突然空間に穴があいたような奇妙な唐突さ。
「これが俺の正直な気持ちだ、」
何か間違ったのかもしれない、紫苑はそんな目に見えないものなど求めていないし信じてさえいなかったかもしれない、と一気に不安になって、口の中が乾いていった。ふられるかと、少し覚悟もした。
「正直な?」
紫苑の顔に、せめぎ合う色がざわざわと見えた。
「しえん、」
「本当に俺が好きかい?」
嫌な奴だと自分でもわかってるんだよ、と自分を責めるようにいう紫苑に俺は、好きだ、と頷いた。何も言ってほしくなかった。もう自分を責めるのも蔑むのもやめてほしい。
「しえん、俺は」
「おまえは、俺のすべてを愛せるっていうの?」
すこし挑むような口調だったが、怯えたように目の光が揺れる。
「俺は我儘だよ。我儘だし強欲だ。知ってるだろう」
「愛せないなら、俺は既にここにいない」
そっと抱き寄せた紫苑の体躯はいつになく緊張していた。
「俺もしえんも、多分途中で道を間違えた。それだけのことだ」

せめて俺の腕の中では安心して眠れるように。





慈悲深き夢を











オピウム完結。
ああああ自分でも手に負えなくてなんというしまりのない終わり方だ!と胃がむかむかします(爆)
ちなみにオピウムってーのは麻薬の一種?らしいですよ。 ググるとオピウムのことについての記事と、オピウムっていうSM縛りサイトがでてきますw言うまでもなくそれを見た私。乙。キッドさんを赤い麻縄で縛って吊るしたいな^^
(2010 08 13 jo)