「わざわざ集まってくれてありがとうな!ほんま嬉しい!」
相変わらず無駄にイケメンな当時の部長は、心底嬉しそうに笑った。
テーブルを囲んで座る面々をぐるりと見渡せば、俺が3年の時のレギュラー陣の懐かしい顔がほぼ勢ぞろいしている。当時より少し大人っぽい、というよりは男くさくなったように感じるということは、俺も男くさくなってるんやろか。何に一番驚いたって、あのちっちゃくて可愛かった金ちゃんが、身長が高くなるどころか、ガタイもいい感じにがっしりしてたこと。人は成長するもんやね。違和感を覚えて俺はもう一回見回した。やっぱりもう一巡しても、俺の元パートナーはおれへんかった。ずっと会いたかった。会えなかった。俺の、愛しい光。
「まぁもう時間やし、」
蔵りんは腕時計を見遣って少し首をかしげた。
「先はじめ、」
「遅れてすんません」
先始めようか、と蔵りんが言い終わらんうちに飛び込んできた声。その方向に全員が視線をよこした。
「お、セーフやん。財前、遅いやないか」
「おー!光や、光ゥ!」
「すんません、バイトなかなかあがれんくて、」
こっちや、こっち!と手招きする金ちゃんに促されて、光は金ちゃんの隣――俺の真向かいに座った。
「ほな、今日は盛り上がろな!お疲れ様!乾杯!」
乾杯、と口々に言いながら、互いのグラスをぶつけ合う。
「乾杯」
光は俺に向かってすっとグラスを差し出してくれた。
「……乾杯」
来やひんかと思ったやんか。アホ。


 ―――


「謙也は?彼女とかおらんの?」
「え?」
近況報告会をした後に、オカズをつまみながら、恋の話に至ってしまった。
「蔵りんこそどうなん?」
「俺はもう少しで落とせそうやな、そのうち告白するつもりやねん」
「はぁー!やるなぁ流石イケメン様はやること違うわ」
大げさにリアクションを取ると周りもはははと笑ってくれた。そこへ一氏が横から
「なんでやねん、謙也かてイケメンやろ?」
と口をはさむ。
「何言うてんねん、俺みたいな地味な顔のどこがイケメンや」
「謙也ぁお前蔵りんと比べるからあかんねんて」
「そらぁ俺イケメンやもんな」
「自分で言うなやぁ」
「光は?!俺は彼女おるで!」
堂々と言う金ちゃんに、光はちらりと視線をやって、当ててみぃと笑った。
蔵りん達は金ちゃんリア充発言に、誰や!どんな子や!どこの子や!と食いつくが、俺は光に恋人がいるのかどうかが気になって仕方なかった。
中学時代の戯れ。部活にも勉強にも一生懸命だったけど、幼かった身体は誰か他人の熱を貪るように求めてた。
“―――……謙也さん、けんや、さ、んっ”
俺の背中に腕をまわして、喘ぐように俺を呼んだ光は、夢やったんかもしれん。
卒業と同時に何もなかったかのように消滅してしまった深い関係。
「えー光!教えてぇな!等価交換やで!」
「俺はそんな約束した覚えないで」
言ってから、光は俺を見た。突き刺さる様な視線。見るな、見るなや、そんな目で。お前にとっては遊びやったんかもしれんけど、俺は本気やったんやで。快楽が欲しい気持ちもあったけど、俺は本当に、本当に、お前が、
「謙也さん」
光の口が、今夜あいてます?と動く。

ごくり、とつい生唾を呑みこんだら、向かいに座る悪魔は口角をあげた。







みずから苦しむか、あるいは他人を苦しませるか、
そのいずれかなしには恋愛というものは存在しない。
―― レニエ 「どんく」




少しダークめでだめだめな謙也くん視点なお話。何年後かはお任せします。中学時代に若気の至りで身体を重ねてしまったのが忘れられなくて、謙也クンは光に執着してるけど、光ちんは手の内を見せないまま、再び謙也クンを誘おうとしているよ!っていちいち説明しないとよくわからない話でごめんなしあorz
騙されていても、利用されていてもいいから、好きな人の傍に行きたい。あはれ謙也w私も光になら騙されてもいいよ!寧ろ騙してくれ!はぁはぁ!(2010 12 28 jo)