例えば、

俺がどんだけ、永四郎のことしちゅんか言ったら、

やーは、俺のこと、笑う?



この想いと、



「キスって、どんな味がするのかなー」

意外と乙女ちっくな声でた。よし、俺今でーじ可愛かったぞー。
とか思ったのに、ふわあっと欠伸が出た。うわ、今のない。

「黒糖の味とかしたら、最高ッ!」

俺も、永四郎も、さとうきび好きでしょ?だから、だから、

「貴方が好きなだけでしょう?」

わー、バッサリ切られたー!永四郎って冷たい。大人ぶっちゃって。今だって俺結構積極的に話してんのにーっ、でも、わざわざ俺のクラスまで来てくれてるから嬉しい。でーじ真剣に部誌見ちゅうけど。

「永四郎って、ちゅー巧そーう」

これ、本心。俺ずっと思ってたんだもん。

「はァ?」
「人妻とか、たぶらかしてそーう」

どういう意味ですか、と永四郎は顔を顰めた。あ、怖い顔。怒ってる、ごめんごめん。

「あー、怒んないでー」

怒ってません、とか言いながら、永四郎はまだ口の中でぶつぶつと言っていた。けど、ばっちり目が合って、俺がドキーッとしてると、

「裕次郎、」
「んん?」
「キス、教えてさしあげましょうか?」

ええー!?って驚いてると、永四郎はもう、すぐそこにいて、俺の、俺の唇を、ああ、永四郎の唇が俺のと重なって……

「んっ……」

熱い舌が入ってきた。いきなりディープキスやっしー!

「はっ…あ、永四郎、あっ…」

やっぱ、俺の思った通りやっさ。
永四郎は、えっち。しかも、ものすごーく。

「…やっぱ永四郎エロイさあ」
「悪いですか?」

開き直りよったしー!悪くないでーす、だって、俺たちそういうことに興味があるお年頃やっしー。
ふいに、永四郎の手が、俺の頭の上に置かれた。そのまま撫で撫でされる。
こいつー俺をわらばー扱いしよって!でも嬉しーい!やったー!
永四郎は、たまに…本当に優しい。俺の嬉しいこと、ちゃっさん知っとる。

「なァ、」
「ん?」

ほら、優しい声。らしくないとか思ってぃんのかなぁ?うぅん、俺、うっさんよー

「俺って、永四郎の、」

何かや?
ねえ、

「ああ…もうこんな時間、」

さっと、永四郎の手が離れた。壁にかかった時計は4時30分。
もうこんな時間か。でも、でも、
俺の話聞いてー

(あ、泣きそう、)

帽子を目深に被って、しばらく動けなくなる。優しい永四郎。冷たい永四郎。
全部全部、でーじしちゅんよ、やくとう、俺は…不安でいっぱい。



しちゅんよ、永四郎。
俺はわらばーじゃねーらんど。やくとう、俺を見て。
俺の気持に気付いてよ、ねえ、永四郎。





(2010 02 22 時雨)