あい らいく ゆー
わんでも分かるよ、
くぬ感情の名前くらいはね。
「せーんせーっ」
「コラ、足をぶらぶらさせないの。行儀悪いでしょ」
「はーい」
横に座ってわんの算数のワークの丸つけをしてるのは、木手永四郎先生。近所のお兄ちゃん。高校2年生。頭はでーじ良くて、しかもかっこいい、わんだけの先生。わらばーの頃からずっとわんの面倒見てくれてて、今日もわんの算数を教えに来てくれたんさぁ。
「取り合えずは出来てるみたいですね」
「へへっ、わん、ちばったんばぁよ?」
「よく出来ました」
くしゃりと頭を撫でられる。ちょっとくすぐったい感じ。そして、わんだけに見してくれる、永四郎にぃにの優しい表情。わんだけの先生だもんね。
「えーしろにぃに、ここわからねーらん。おしえて?」
「どれ?」
「くりぃ」
「これは……」
永四郎にぃにがシャーペンを走らせる。丁寧な解説をしながら、にぃにはどんどん式を書いていった。その真剣な横顔が、
(きれー……)
「裕、聞いてる?」
「き、きいてるさぁ!」
「ふふ、じゃあこの問題解いてみて」
「むー……」
わんはしばらく問題とにらめっこ。式っぽいの書いて、ちょっと計算してみたけど、結局突っ伏してしまった。
「む、むりー」
「裕次郎は来年受験生なんじゃないの?」
「うん。えーしろにぃにとおんなじちゅーがくにね!」
「そう。じゃあもっと頑張らなきゃ」
「うんっ」
永四郎にぃにの為にも、わん、ちばるどー。
やてぃん、にぃには大学受験で、わんは中学受験、か……
(また、いそがしくなる……)
わんも忙しくなるけど、にぃにはもっと忙しくなる。にぃにが中学受験や高校受験の時みてぃーに。
(また……あえねーらん)
昔、にぃにに遊んでもらえなくなって、わんは寂しくて、泣いちゃった事がある。無理矢理押しかけた事もあったさぁ。きっと、忙しかったにぃににはでーじ迷惑だったと思う。
やてぃん、にぃには1つも嫌な顔しないで、わんに構ってくれた。
優しい、わんの大好きなにぃに。
「ねぇ、にぃに」
「何?」
「また、さびしくなるね」
「……あぁ、」
永四郎にぃには小さく呟く。そして、わんの手を握った。
「え、わ!」
にぃにに手、握られてるー!どんがちむちむするー!……あれ、ちむがどんどん?
「裕がまた泣いてしまうかも」
「な!も、もううんねーるくとぅねーらんっ!」
「本当に?」
「じゅんに!」
「ふーん」
「……っ」
わんは涙目でにぃにを睨む。にぃには眼鏡を押し上げ、ニヤリと笑った。
「無理しなくても」
「む、むりなんかぁ!」
「また寂しくなったら来たら良いでしょう?」
「え?」
「俺の家に」
「! いいの?」
いいよ、とにぃには頷いてくれる。
「せめて、泣く前には来なさいよ」
「へ?」
「裕の泣き顔は、もう見たくないから」
「う、うん」
「お前は、笑っている方が断然良いよ」
「しんけん?」
「あぁ」
にぃにの笑顔に、わんは安心する。
「ほら、ちゃんと最後まで解いて」
「えー、わからねーらーんっ!」
わんが足をばたつかせると、永四郎にぃにはため息をついてシャーペンを取った。
「仕方ないな」
またにぃにがペンを走らせる。わんはその文字を必死で追い掛けた。
そして、ふと思う。
「にぃに」
「ん?」
「わんも、いつかえーしろにぃにみてぃーになれるかや?」
「……そうですね」
にぃにのニヒルな笑み。うわー、かっこいい、とか思っちゃうわんは末期ですか。
「ちゃんと解説聞いてたら、ね」
「うんっ!」
ちゃんと聞くよ。
だって、永四郎にぃにみてぃーになりたいもん。
……永四郎にぃにが、大好きだもん。
ちばゆんどーっ!
そして、いつかくぬ恋が、成就しますように。なんてね。
(2011 03 08 時雨)
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