「……暑い」
「……だぁるな」
遠くから聞こえる蝉の声。
口に銜えたソーダバーは溶けて、汁がテーブルに零れた。
狭い部屋、小さなテーブルを挟んで向かい合って座る俺達。
Tシャツの袖を捲り、二の腕を剥き出しにした恰好で胡座をかいてただ何をするのでもなくぼうっとする。向かいに座っている知念は虚ろな目を向けて、額に浮かぶ汗を拭った。
「……暑い」
「……だぁるな」
「暑い」
「うん」
「……何もする気が起きねーらん」
「わんも」
ソーダの甘い汁を啜り、俺はアイス棒を噛む。知念は立ち上がって、また座り込んだ。何をしてんだ、こいつ。
「ぬーした?」
「何も……何しようとしたか忘れた」
とうとう知念も壊れてしまったか。まぁこの暑さじゃ仕様がない。
何もする気が起きないのはお互い様。
「ちねん」
「ん?」
「こんな暑い時はさ」
「……んー」
知念はテーブルを片付け、俺の口からアイス棒を取り上げた。
「おぉ、急に積極的になったさぁ」
「んー、凛クンに言われたら」
「ん?」
「したくなった」
ちう、と唇を吸われる。
「え、」
「何?」
「誘って、」
なんかない、と言おうとした。
知念は聞いてない。
(……クーラー位つけろっつの)
暑い中、とうとう俺達は裸になった。
べたついた体。気持ち悪い。
汗の匂い。風鈴の音。風流だな、とか思う暇もない。
体と体を重ねて、俺達は汗だくになる。





「……暑い」
「……だぁるな」
汗を吸い込んだシーツに顔を埋め、俺は小さく呻いた。
知念は裸のまんま部屋の中をうろついている。
長い手足。首筋を伝う汗。
額に張り付いた前髪。暑そう。実際暑いんだけど。
「ちねん」
「ん?」
今度こそ、
「……クーラー位つけろっつの」
















(2010 08 24 時雨)