「ち、ちねん」
裕次郎に背中を押されたわんは、部活の前に知念を呼び出した。
もちろん呼びに行く度胸はなくて、連れて来てくれたのは裕次郎。呼び出してくれた当の裕次郎は、じゃぁあとはごゆっくりーとか言いながら、すぐに上機嫌で去って行った。
放課後の図書館。一番端の棚の影は、埃のにおいがしたけど、なんだかその薄暗さが落ち着かせてくれた。
「何かや」
「あ、のさ、」
「くぬ前のくとぅかや」
「うん」
「……覚悟はしてるさァ」
諦めたような開き直ったような声が掠れた。
「違う、違う!」
「何がよォ」
「知念、が、し、しちゅん」
知念はありえないと言いたげな顔でわんを見た。
その顔はない、先に言ってきたのは、やーぬ方なんに。
凛はどうしたい?
裕次郎に強く聞かれて、わんは口ごもってしまった。
「凛は、知念と友達でいたいの?親友がいい?それとも、他の女子にとられるのは嫌?」
授業をサボって裕次郎とゆっくり話す時間をつくったもののいざとなるとなんとなく話にくい。
「べ、つに、知念が誰と付き合おうが、知念の勝手だし」
「うんねーるくとぅじゃねーらん、あんね、欲張りよーさい」
「え……」
「性別とか関係ねーらん、しちゅんて思ったらぶつかれよォ!しんけん。諦めるなフラー」
「そ、そこまであびなくても、」
「知念と付き合いたい?チューしたい?」
「ちょ、っと待って、ちゅー、とか、は、なんか、その」
また、知念に唇で触れられた額がひりりとした。
裕次郎に見透かされた気がして慌てて顔をそらす。
「照れ屋さんめー!」
ぐいーっと裕次郎はわんの頬をつねった。
「フラーァ、ダブルスパートナーとちゅ、ちゅーなんて!
考えたことあると思うかや?!ねーらん!」
恥ずかしくてつい声を荒げると、裕次郎はにやにやしながら
「凛が別になまぬままでゆたさんってあびるんなら
わんが知念もらってもゆたさんてくとぅやし」
と言った。
「え、何の話!やだ!だめ!」
「なーんーでー!わんはだめで、あの彼女はゆたさんかやぁぁあ!」
「だ、だって、……裕次郎やっし」
「答えになってねーらんど」
「だってわんも知念もいきがやさァ、わ、わんはくぬ先ずっと知念を好きでいる自信あるけど、知念、は、わからねェしや、」
知念が好き。告白された相談を受けた時なんかショックのあまり吐きそうだったし、仲良さげな様子を見るにつけても不愉快だったし、応援なんかこれっぽっちもしたくなかった。誰よりも知念を好きでいる自信はあったのに性別だけが邪魔をする。好きな人の幸せを祈るだなんていうきれいごとなんかわんにはできなかった。なんで知念が好きなんだろう。なんで知念じゃなきゃだめなんだろう。
「知念泣いたんじゃなかった?」
「え、あ、」
「知念だって思いつめたんやっさァ」
「う、ん」
「とりあえず話し合ってみたら?」
「ゆ、裕次郎は」
「あい?」
「わんが、ゲイって知って、気持ち悪くないかや?」
「何かぁ、凛くんは凛くんだぁる!」
そういって笑った裕次郎の顔を見て、また少しだけ軽くなれた気がした。わんは何度裕次郎に救われるんだろう。
「マブヤー……なま、なんて」
いきなりしちゅんだなんて、なんかちょっといろいろまずったような気がする!と手にじっとり汗をかきながら、わんはゆっくりと唾を飲み込んだ。落ち着け、こういうときこそ落ち着きが必要なんさァ。
「あ、遊びとか、半端な気持ちなら、嫌だけど、で、でも、なんてーか、いやだ、知念が、他ぬいなぐと仲良くしてるん見るんは不愉快っていうか、」
ちらりと知念を見上げると、表情は一切変わっていなかった。……怖い、このままぶちまけていいのか、怖い。
「あの、だか、ら、」
「ねェ凛クン」
ぐんと知念が接近してきた、慌てて下がるも背中側は既に本棚、逃げ場はない。
「わんは凛クンが好きさァ、チューとかいろいろ恋人らしいこともしたいってずっと思ってた。それでもやーはわんぬくとぅ好きって思ってくれるんかや?」
「ん、あ、う、ん」
「凛クン上向いて」
「で、も、なまぬ彼女どうすんだよ、」
「すぐ別れるよ」
だって凛クンが好きだから。
優しく囁かれるのと同時に、知念の唇がわんぬ唇にぶつかった。
どわー知念が私の思う方向性の知念じゃ、ない(・ω・;)
まったく関係のない樽兄トークその2(ぇ)。Mから始まる某SNSサイトの女優アプリでお気に入りのキャラがいまして、ずーっとそのキャラをパートナーにしていたんですが、クリスマスの日にクリアしたゲームで着ボイスがゲットできたんです。そしたら、中の人が樽兄……罠……罠なの……?永四郎が優しい声音と敬語で囁いてくれます。はぁはぁ。おわり。(2011 01 30 jo)